いよいよ、新入社員を迎える季節到来!その前に、新入社員研修のスケジュールを作る必要があります。とは言っても、何から手をつけたらよいのか、お困りの方も多いのではないでしょうか。企業によって、「新入社員研修」の目的や狙いなどは、似ている部分も多いですが、全て同じではありません。自社に最適な研修スケジュールを作るのが不可欠です。また、将来の自社を担う新入社員の皆さんが最初に受ける研修ですから、効果的な内容で実施したいものです。今回、そのためのポイントを詳しく紹介していきます。
学生から社会人となる意識・マインドの切り替えや、新入社員に必要な仕事の基本の理解と習得をゴールとして、入社直後に導入する研修の一例です。これまで、延べ3,000社以上の企業様の研修を担当してきた中での、最大公約数かつオーダーが多いスケジュールの例を挙げてみます。
1.組織で働くとはどのようなことか?
(1)経営環境の現状と組織の理解
(2)組織にあるもの~経営理念・ビジョン・目的
(3)新入社員の役割
2.ビジネスマナーの習得
(1)ビジネスマナー・礼儀の重要性
(2)基本動作・挨拶
(3)言葉遣い
(4)服装と身だしなみ
(5)名刺交換
(6)電話応対
(7)メールの送り方
(8)ビジネスマナー総合ロールプレイング
3.仕事の基本
(1)仕事の原則とは
(2)実践ワーク
4.職場のコミュニケーションについて
(1)職場のコミュニケーションの重要性
(2)指示命令の受け方
(3)報連相のあり方
5.職場の人間関係とは
(1)仕事には、「目標」がある
(2)目標達成に必要なものとは
(3)チームワークを確立する
6.仕事に取り組む時野基本的な態度について
(1)ロールプレイング
(2)目標の立て方、振り返りの仕方
(3)成長し続けるために
(4)伸ばしていくべき二つの能力
7.まとめと振り返り
(1)総復習
(2)決意発表
一般的な新入社員研修のスケジュール例を紹介しました。それでは、このスケジュールはどのように作ればよいのでしょうか?早速、ポイントをひとつずつ解説していきます。
新入社員には、自社の事業内容を理解するとともに、仕事を遂行するにあたって必要な業務上の基礎的知識や技術の習得が求められます。また、新入社員に対する期待として、できるだけ早く自社や職場に慣れ、基礎的な業務を一人でまわすようになることが考えられます。
そのためにも、新入社員の教育・研修での目的としては、企業の経営理念やビジョンなどについての理解、組織人・企業人としての期待と役割の理解、組織人・企業人としての心構えや基本動作の習得等が挙げられます。
新入社員研修のスケジュールを作成する時には、会社方針や概要、沿革、基本のビジネスマナーの習得、工場や営業など現場での実習、コミュニケーションやチームワークの理解と実践、実務に必要な基礎知識や仕事の基本動作を中心に組み立てていきましょう。
これらを習得するために検討したいことは、どうしたら「身につく」か、ということです。そこでオススメしたのは、講義中心より、ロールプレイングやワーク、実習など体で覚えられるようなトレーニングを多く取り入れることです。例えば、「採用のための会社説明会での、自社PR」などとテーマを決め、チームを組み自分達で制作し、プレゼンする等のワークも、適度に緊張感を与え、実際に手や体を動かすため、効果があると言えるでしょう。
新入社員研修は、入社時に行う導入研修で終わりにするのはおすすめしません。導入研修を行った後、三か月後、半年後など、およそ新入社員として過ごす期間の最中に実施するフォローアップ研修までを一連の研修として考えてスケジュール設計をした方が、後々を考えると効果的と言えるでしょう。実際に現場に配属され、様々な経験を積むからこそ習得スピードが早まる場合もあるからです。また、日常遭遇する様々な問題や課題を共有し、解決への対策を集合研修の場で互いに意見していくことによって、仕事への意欲やモチベーションの維持や向上を図ることができます。さらに、同期の社員との絆を深めるのにも、研修の場は大いに役立ちます。仕事で上手くいかなくなった場合の、セーフティーネットの一つが、同期との絆という話もよく耳にします。より多くの共通体験をさせることは、せっかく採用した貴重かつ優秀な社員を辞めさせないためにも、大切なのです。
また、導入研修や職場実習の後の職場配属においては、メンター制度・ブラザー制度やOJTなどできめ細かく日常指導を行いましょう。特に、在宅勤務などを行う場合は、これまで以上に職場に慣れるまでに時間がかかるもの。それを補うための制度を組み合わせて使いましょう。
研修実施にあたっては、社内実施の研修で行うか、外部(研修会社、講師、講習等)で行うかを、対象人数、効果、予算面を総合的に判断して決めていきます。特に、外部業者に委託する場合は、「なぜその研修は社内で行わないのか」を明確にしておきましょう。
社内、外部業者に委託するとしても、会場費や交通費、機材費、宿泊・食事代・講師料などを検討し、確定させましょう。特に、オンライン研修の場合は会議費や交通費は削減できる場合がありますが、安定して配信するのに必要な機材の確認を忘れないようにしましょう。また、外部業者に委託する場合では、担当講師を決めるにあたっては、事前に面談が可能な場合は面談を行うのもよいでしょう。
研修を行うにあたっては、通うのか、合宿するのかも検討しましょう。また、事前学習や事後学習をどのように組み立てるのかも、予め確認しましょう。その場合に、勤務時間との兼ね合いについても、調整が必要な場合もあります。そして、研修実施後の、効果測定についても、アンケート形式にするのか、テストの実施かなど、予め検討しておきましょう。
ずっと座りっぱなしの座学では集中力が持たないと言われます。目安は90分単位で実施項目の単位を考えましょう。その中には、座学やワーク、ロールプレイング、意見交換、発表などを組み合わせ、変化を持たせることで、視覚や聴覚等を刺激することができます。そして、必要なスキルを「知っている」レベルではなく、現場で活用「できる」レベルまで昇華させていくよう、指導方法などを工夫しましょう。
受講する新入社員が安心できる環境を準備しましょう。アルコールによる消毒はもちろん、手洗いも忘れずに。また、会場内の二酸化炭素濃度を計測し、こまめな換気または窓を開けておくことも必要です。また、新入社員同士の距離を取れる広さの会場を用意し、密にならないように配慮しましょう。
年齢が関係するのか、若い人同士というのは、人と人との距離が近い場合が多いです。
グループワークの際にも、アクリル板や机を用いる等、適切な距離を保てるよう、物理的な工夫も重要です。
移動によるリスクを軽減したい場合は、オンライン研修という選択肢もあります。
いずれにせよ、無理のない日程で研修を組んでいくことが重要です。
受け身の受講ではなく、自主的な受講を促すよう、早いタイミングで目標設定を行います。PDCAを回す習慣を身につけるためにも、適切なタイミングで振り返りを導入しましょう。
新入社員研修を担当して思うところが、学生時代というのは、振り返りという行動をせずに過ごしてきたのではないか、ということです。
授業は大学や専門学校等から与えられ、自分で専攻科目を多少は選び、スケジュールを把握はするのでしょうが、自主的な時間割ではない、ということ。そのため、常に“授業の時間は、学校側に管理されている”という状態。また、その隙間でアルバイト等を入れたとしても、自分で選択して、予定を立ててはいません。授業やアルバイトに何とか遅刻せずに済めばラッキー、その時間をどのように使うのか、という視点では捉えていないことが多いのではないでしょうか。
この思考の延長ですと、新社会人として企業に入社しても、常に“会社に管理されている”状態であり、“自主的に、自分に不足していることを習得する”という行動はとれず、“興味がないことでも、会社で働くのに必要だから、仕方なく”といった気持ちが心の中に巣くっていても、仕方ありません。
だからこそ、社会人は、“自ら時間を管理する=仕事を追いかけていく”という価値観を早いタイミングで体得してもらう機会を作る必要があります。
そのためにも、新入社員研修期間を活用し、朝の時点で“今日は、何を目標にするのか?”という目標を立て、夕方の時点で“達成・進捗度合いはどうだったのか”を振り返ることをオススメします。
振り返ることができる目標設定を設定するためには、“定量化された目標設定の仕方”について指導する必要があるでしょう。また、併せて、論理的思考についても、理解できていると、現場に配属された後の業務がスムーズになるでしょう。
この振り返りは、“反省”とは異なります。“反省”を辞書で調べると、「自分のしてきた行動をかえりみて、その可否を改めて考えること」「自分のよくなかった点を認めて、改めようと考えること」(出典:デジタル大辞泉)とあります。本来、反省をするだけならば、“落ち込む”という要素は含まれていないはずですが、新入社員の皆さんの様子を拝見していると、「反省と落ち込みは自動セット」な様子が垣間見えます。断定はできませんが、幼い頃、落ち込んだ様子を見せると、周囲の誰かが「何かあったの?」「大丈夫?」と声をかけてくれたという経験をした方もいるでしょう。そこで、自分の不満や不安を吐露し、慰めてもらって、スッキリしたという経験があると、無意識下でこのような「落ち込む」という行動を取る場合があります。
これらは、あくまでも“幼い時”の話であって、大人となった“今”の話ではありません。その点については、入社の早い段階で、周りの先輩や上司が修正するよう、促す必要があります。
“仕組み”というと、大袈裟かもしれませんが、例えば研修の1日を振り返る日報を用いている企業も多いのではないでしょうか?日報という具体的な作業をすることで、意識づけが見込めることは間違いありません。だからこそ、せっかくの日報だからこそ、上司や先輩は、読んで終わりにせず、文章の修正箇所だけでなく、所感の書き方等を指導することをオススメします。
誰にでも言えることかもしれませんが、スタート直後というのは、新しいことを受け入れやすいもの。書き方等についても、最初に指摘をされることで、分かりやすく書こう、誤解を招かない言葉の使い方をしよう、等と改善行動が取りやすいのではないでしょうか。
反対に、この時期にこれらを行わないことで、「自分の考えが全て正しい」「(上司から何のレスポンスもないことによって)上司や先輩は自分には興味を持っていない」等と、誤った行動や思考を定着させる恐れもあります。
また、数多い新入社員の日報をチェックする時間がない、取れないという場合には、IT技術でカバーすることも検討してはいかがでしょうか?例えば、チャットツール(ビジネス用LINE、チャットワーク、スラック等)や、教育専用プラットフォームを活用するのも良いでしょう。今の時代だからこその、効率も図れるものを併用することも考えていきたいものです。
新入社員にありがちな三大失敗といえば、“忘れ物”“遅刻”“報連相の抜けやもれ”ではないでしょうか?リカバリーが可能なミスが多いとも言えるでしょう。
だからこそ、今後の対策については、「次回は気を付けます」で終わらせず、具体的な行動改善計画を求めたいです。
例えば、“忘れ物”の場合、そもそも、予定を把握していないということもあります。この場合、いくら気を付けたとしても、また同じ失敗が起こる恐れが高いです。そこで、注意をする際には、事実はもちろんですが、これらのミスは、新入社員にとって、今後どのようなマイナスに繋がるのか、といった点も伝えておくことが重要です。
研修を提供する側と、受講する側とで、ゴールのレベルを確認し、認識を1つにしておくと良いです。この認識が異なると、研修後の状態に大きな齟齬が発生することが予測できます。
一般的に、新入社員の皆さんは、社会経験があったとしても、アルバイトとして定型業務を担当して働いた、またはインターンシップで短期間働いたということが多いのではないでしょうか?
それだけの狭い常識であっても、彼らにとっては、“自分は社会人とはどのようなものかを十分に知っている”と捉えていることがあります。
そうすると、いつまでたっても、アルバイトやインターンシップ気分のままということが起きてしまいます。そのため、できるだけ早い段階で、学生時代と社会人では求められる基準が異なることを、分かりやすく伝えることが重要です。
具体的には、行動のスピードや、話す時の声の大きさ、結論から要点をまとめて話す、質問されたら応答する、清潔感のある身だしなみを行う等において、認識の差が大きいです。
そのため、集合またはオンライン研修中には、徹底してこれらの捉え違いについては、是正を試みましょう。誰しもが、一度や二度指摘されたくらいでは直らないもの。そのため、職場でのOJT期間でも、気になる点は、先輩社員や上司が改善を求め続けることが肝心です。
なお、新入社員の中には、これまでの人生で、ハキハキと話したことがない、という方も一定の割合でいます。その場合は、“もっと、ハキハキ話そう”という促しの言葉では改善しにくいです。具体的に、ハキハキ話すための発声の練習等の実践を求める等の対策が不可欠です。
もう一つ、清潔感のある身だしなみについてですが、これは特に、学生時代に髪型等に気を配ってこなかった場合、早いタイミングで指導しましょう。ナチュラルが良いのではなく、その企業が求める社員像に最も近い髪型を選択するという思考が必要です。つまり、朝起きた時の髪型ではなく、整髪料をつけて整える、マスク着用下でも表情がお客様に伝わるように、前髪をあげる等、具体的なポイントを伝えていきます。また、特に、短い髪型の場合、定期的に散髪を行わないと、不潔な印象を与えかねないため、散髪もスケジューリングする、ということをアドバイスしましょう。
研修の知識を覚えていても、使えなければ意味が・・・といったお声も聞きます。一方で、少なくとも知識を覚えていなければ、実践に結びつけるのは更に困難でしょう。それでは、学んだことを記憶として定着させるには、どうしたらよいのでしょうか?
人の記憶に関して、“エビングハウスの忘却曲線”というのを聞いたことがあると思います。1880年代に、ハーマン・エビングハウス氏が行った研究結果です。1回しか出てこなかった内容は、30日後には10%しか覚えていないという事実を発見しました。一方で、出てきた内容を、間隔を空けながら繰り返すと、30日後には90%も覚えているというものです。なお、目安は30日の間で、6回と言われています。
つまり、研修中にも繰り返すのはもちろんですが、研修が終わった後も、翌日、三日後、一週間後、等とレビューすることが重要なのです。なお、レビューするといっても、講師が伝えた内容を見る、聞くだけでは受講生のモチベーションは下がりかねません。そのため、社内での行動プランの実践や、OJTでのレビュー。社内での実践発表会等、仕掛けを作ることも重要です。
学生時代にアルバイト経験があれば、メモを取ったということもあるかもしれませんが、最近は接客の方法ですらスマートフォンの動画で学ぶことも増えてきました。
そして、更に追い打ちをかけたのは、この数年の社会環境により、アルバイト経験そのものが少ないということです。そのため、メモを取るということに不慣れな場合があります。
この場合、メモを取ってはいても、後で読み返すのに文字が汚くて読めない、どのページにメモを書いたのか分からない・見つけられない、書いたメモ用紙(そもそも、紙1枚!)を紛失した、ということも。
スマートフォンに記録する、という業界もあるかもしれませんが、まだまだ日本社会では、社内の会議や打ち合わせ時にスマートフィンを触るのは、7割の方がマイナスイメージを持っていると言われています。特に、お客様の前ではなおのこと、スマートフォンの操作は嫌われかねません。
だからこそ、日常から必ずメモを取り、内容を自分で確認できるよう、メモの習慣化を求めましょう。特にオススメなのは、日付のある、手帳形式です。いつ指示されたことなのか、いつまでに行わなければならないのか、も正しく記録することが可能だからです。
仕事で成果を出すには、様々な能力が必要です。コミュニケーション力等は、誰もが重要だと分かっているため、日頃から心がけている、と言う方も多いのではないでしょうか?
一方で、日本人は大人になると世界一勉強しない・・・等という話を耳にするように、会社に入った途端、自主的に学習することを選択しない、ということはないでしょうか?
“人生100年時代”と言われることが多くなりました。社会の変化スピードも、過去とは比較になりません。だからこそ、1人ひとりの自助努力が欠かせない時代になったとも言えるのではないでしょうか?
学習の仕方、ジャンルについても、今は選択肢が広くなりました。オンラインを活用した学習も、有料・無料を問わず選択可能です。会社に入ったことが人生のゴールではなく、自分の能力を最適化していくためにはどうすれば良いかという思考を持ち、学習を継続しましょう。
会社の方針、というのはありますが、経営理念やビジョンは通常毎年変わるものではありません。そのため、それらに沿った人材育成についても、基本部分は変わらないのが一般的です。そのため、手段に工夫や変更があったとしても、人材育成の目的や目標は変わらないはず。だからこそ、新入社員研修の基本は“変えない”というのが重要です。もちろん、時代の変化に応じて、伝え方やフォローの仕方、使用ツールが変わるというのは問題ありません。好ましくないのは、今年は新入社員の人数が少ないから、研修は数日だけにしてあとはOJTでいい、といった場当たり的な方針の変更です。新入社員研修の目的は、学生と社会人のマインドの切り替えや、同期の横のつながりを深める、何よりも会社として期待されていることを体感する、といったことを忘れないで欲しいです。
新入社員研修のスケジュールを決めるためには、様々なポイントがあります。是非とも、参考にし、御社の新入社員の皆さんに最適かつ効果的な新入社員研修を提供していきましょう。
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