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効果的な新入社員研修を実施するためのカリキュラムの組み方をご紹介

2022.02.22

新入社員が入社して一番はじめに受ける「新入社員研修」。

社会人としての基本的なビジネスマナーだけでなく、企業理念の浸透、業務に関する専門知識など、学ぶべきことは多岐に渡ります。

新人育成は、入社してきた新入社員の「社会人としての成否を分ける」と言っても過言ではなく、育成計画は慎重に立てる必要があります。しかし、毎年まったく同じカリキュラム内容で新入社員研修を実施し、研修後は現場でのOJT指導に任せっきりというケースが多いのも現状です。「どのようなカリキュラムを組み立てれば、効果的な新入社員研修になるのか」そうお悩みの教育担当者の皆さまに、新入社員の成長を促し、企業の将来を担う人財を育成するための新入社員研修のカリキュラム作成のポイントをご紹介します。

最近の新入社員の傾向を理解する

「新入社員」と言っても、生まれた世代によって仕事に対する考え方や捉え方は様々だということは、すでに皆さんもお分かりのことかと思います。特にコロナ禍に入社した「ニューノーマル時代(※新しい常識・状況)」の新入社員は、どんな働き方を求めているのか?デジタルネイティブ(※物心ついた頃からパソコンやインターネットが普及していた環境で育った)かつソーシャルネイティブ(※スマホやSNSに幼少期から慣れ親しんでいる)である「Z世代(※2022年時点で大体25歳以下の若い世代)」の働く価値観や特徴について理解をすることが、新入社員研修のカリキュラムを立てる上で、大切なポイントとなります。

Z世代の特徴とは?

個人差はあるものの、以下が「Z世代」の特徴だと言われています。

⑴インターネット環境での情報収集が当たり前

テレビを観る時間よりも、YouTube、SNS等のインターネット利用時間が多く、新聞やテレビの媒体から離れて、Webメディアでの情報収集が当たり前。その理由としては、新聞、テレビは「自分が興味ない情報も多々入っている」から。そのため自分自身に必要な情報を得やすいWeb媒体の利用が多くなった

⑵ブランドに対するこだわりがあまりない

「人に勧められた商品」「知名度が高い商品」よりも、「自分の価値観に合うかどうか」という視点を大事にしている傾向にある

⑶転職に対して比較的前向きなイメージをもっている

「転職は簡単にできる」と考えている割合が多いことがわかっている。(出典:㈱マイナビ集計・発表アンケート「転職動向調査2021年版」)昇進の有無にかかわらず、定年まで今の会社に勤め続けるといった考えを持つ割合が少ないこともアンケートからわかった

新入社員研修の目的を明確にする

研修カリキュラムを組み立てる前に、まず新入社員研修を実施することの目的を明確にしましょう。

あらかじめ「新入社員をどう育てていくのか」という方向性が定まっていることは、一貫性のある新入社員教育につながります。適切なカリキュラムにより、新入社員が企業の「経営理念」や「事業内容」に対しての理解をより深めることができます。

カリキュラムを作成する目的は大きく2つあります。

⑴社会人としてのスタートに必要な知識の習得

基本的なビジネスマナーを学ぶ目的としては、

・ビジネスの場においての信頼関係の構築のため

・企業のイメージを左右するため

・顧客満足を向上させるため

⑵企業で成長するために必要な知識とスキルの習得

・業務に必要な知識の習得

・仕事への向き合い方、意識の向上

新入社員研修は、新入社員がこれから企業で活躍するための基礎的な土台を作ることを目指す研修です。

新入社員研修はいつ実施、どのくらいの期間で実施するのか

企業それぞれの研修内容、教育の仕方によって新入社員研修を実施する適切な時期は異なります。一般的な傾向としては、新入社員研修は新人が入社した直後に実施する企業が多いです。

・OFFJT研修(通常の業務を離れた集合研修)は、入社から2週間~2, 3ヶ月程度

・OJT研修(実務を通して行う研修)は、入社から6ヶ月、1年間

OJT研修においては、一般的にはOFFJT研修のあとに実施することで効果があるとされています。研修で習得した知識をアウトプットして、スキルの定着と安定を目的とします。

新入社員研修のカリキュラムに取り入れたい内容

具体的にどのようなカリキュラム内容を新入社員研修で実施すればいいのでしょうか。大切なポイントは「研修を経てどんな新人になってもらいたいのか」という、研修の目的とゴールから逆算することです。目的とゴールの設定が出来ていないと、研修が形だけになり新人の意識や行動が変わらないということが課題になります。

⑴思考・意識変革(学生から社会人へのマインドセット)

「採用されたことがゴールではなく、ここからが長い社会人生活のスタートである」という社会人としての意識と自覚を高めることが重要です。学生時代は、自分と気が合う、合わないで人付き合いが選べましたが、社会人になれば人間関係が築きやすい、築きにくい関係なく、人間関係を築いていかなければならない、といったコミュニケーションの土台作りに関する思考を変えることも不可欠です

⑵会社、職場についての理解を深める

企業理念、会社の事業内容、また社内規定などを正しく理解することで、配属先で仲間と同じ目標を掲げて仕事に取り組むことができるようになります。

事業内容について理解を深めることが大切な理由として、「現場に配属されたときに、新入社員自身が困惑することがなくなる」ということがあげられます。そのためにも、企業が行っている事業の全体像を把握し、自社の商品やサービスについて、理解を深める機会を新入社員研修のタイミングで設ける必要があります。自社がどのような仕組みで収益、利益を生み出しているのかといったビジネスモデルを説明することで、新入社員の仕事に対する理解と現場配属後のモチベーションを高めていく目的があります。

⑶社会人としてのビジネスマナー

ビジネスマナーは、スムーズに仕事を進めるために必要です。さらには顧客との信頼関係を築くためにも基本的なビジネスマナーは身につけておかなければいけません。新入社員自身が「自分は会社の代表として取引先、社外の人と接している」という自覚を持ち、正しいビジネスマナーを身につける必要性を理解することが大切です。ビジネスマナー研修でのポイントとして、「理論、講義」に重点を置いた座学スタイルよりも、「ロールプレイング」を交えた体得型にして、正しいビジネスマナーのスキルを徹底的に体で覚えて定着させることです。インプットした内容を自分でアウトプットすることにより定着度が高まり、どんなビジネスシーンにおいても自信を持って対応できるようになります。

新入社員がビジネスマナー研修で学ぶべき内容としては、名刺交換、電話応対、来客応対、報連相の仕方、指示の受け方、仕事の進め方、敬語、席次などです。

⑷業務に必要な専門知識とスキルの習得

新人を早い段階で職場で活躍してもらうためには、配属先に合った研修内容にすることがポイントです。配属される部門ごとに必要とされる専門知識とスキルが異なってくるためです

⑸コンプライアンスの正しい理解

個人の違反は組織・会社としての責任になることを知り、ついうっかり「知らなかった」でとった行動が組織・会社に甚大な損害を与えるということを理解する必要があります。「知る」ことにより自分と会社を守ることになります。

特にSNSの使い方は、メッセージの伝播力が非常に大きいため、新人研修の中で正しい知識と理解、意識づけ、会社のルールを伝えることが大切です

新入社員研修のカリキュラムにおける7つの教育手段

新入社員を効果的に教育する手法として、代表的な手法を7つご紹介します。

⑴OFF-JT 

通常の業務から離れ、職場外でセミナーや講義受講をする研修方法。基本ビジネスマナー、その他仕事に必要な知識、スキルなど、仕事を進めるうえで必要な考え方の基盤をつくり、仕事のベースを構築することが目的

⑵OJT

実務を通して行う研修のことである。一般的にOFF-JTのあとに実施することで効果があるとされている。研修でインプットした内容をアウトプットすることにより定着度を上げることが目的。仕事の土台となる「正しい型」を現場で学ぶことは、実務において仕事をする上で必須である

⑶ロールプレイング

お客様役と営業役など役割を決めて実践でよくあるシーンを演技する。現場や実際の場面を想定し、実務における疑似体験をすることで、スキルの習得につながる。ロールプレイ後のフィードバックにより、個人の課題を明確にしたりと効果的に正しいスキルの向上に期待ができる。新入社員研修においては、挨拶、名刺交換、電話応対など繰り返し行うことでスキルの習得、実践的に学ぶことが目的

⑷ケーススタディ

ロールプレイングと同時に行うことでより実践的な効果が得られる。現実に即した状況設定、実際に起こったケースなどをベースとして、対応方法を話し合ったり、意思決定をするようなグループワークである。座学で話を聞いているだけよりも、リアルに近い状況を扱うことで、実践的な学びを作れることが特徴である。

例として、接客業を対象とした新入社員研修では、実際に生じやすいトラブルやクレームなどをテーマにすると、配属前に現場の仕事のイメージをすることができる。実際の業務において起こり得るトラブルなどの対処法や解決策を考えることが目的

⑸レクリエーション

ゲームを用いて、新入社員同士がコミュニケーションをとり関係性の構築とチームビルディングを学ぶことが目的。ゲームはただ楽しく親睦を深めるだけではなく、新入社員自身がコミュニケーションを活性化し、リーダーシップ能力を無理なく高められることが期待できる

⑹グループワーク

新入社員がグループに分かれて、与えられた課題に取り組むワークのことである。リーダーなどチームの中で役割を決め、チームワーク、ロジカルシンキング、タイムマネジメントと課題解決能力を身につけることが目的。作業後にプレゼンをすることもあり、デリバリースキル習得の機会にもなる。グループワークには色々な種類があり、その種類を知っておくことで、目的に合ったワークを取り入れやすくなる

・自由討論型

与えられたテーマをチームで自由にディスカッションする。結論の正しさよりも、相手の意見を否定せずに議論を活発に行うことに重きをおく。個人の参画意欲、参画姿勢、コミュニケーションスタイルの把握ができる

・チーム対抗ディベート型

チーム同士で賛否に分かれるテーマを議論する。例えば「コロナが収束したあとも、リモートワークは推奨されるべきか?」というテーマだとした場合、最初に賛成か反対かをチームで選ぶ。ロジカル思考で相手に主張することにより、建設的な議論の進め方を学ぶことができる

⑺フォロー研修

新入社員研修後に実施することで、研修で習得した知識とスキルの定着度を高めることが目的。また新入社員自身が、強化していくべき課題を自分で見つけられる機会ともなる。フォロー研修により、新入社員研修で学んだことが生かされているか確認し、課題や改善点を確認することができる

・フォロー研修実施のタイミング

フォロー研修を実施する時期は企業によって異なる。ポイントは、どのような目的をもってフォロー研修を実施するかにより、時期を決定すること

3か月後―復習がメインであり、研修で実施した内容の定着度を測る

6か月後―仕事に慣れ始めて、中だるみしやすい時期であるため、モチベーションアップを狙う

1年後―入社1年後に実施するフォロー研修は、総合的な振り返りや今後のステップアップの構築を行う。自身のキャリアプランを考える機会にもなる

それぞれの教育手段の必要性と効果を考えてみる

『OFF-JTとOJTがなぜ必要なのか?』

「仕事の基礎知識は、業務をこなす中で身につく」という考えのもと、研修はOJTのみという企業も中にはあることでしょう。しかし、以下のことを考慮するとOFF-JTが必要な理由がお分かりいただけるのではないでしょうか。

・通常業務を行いながらの現場での指導、育成には限界がある

・指導的立場にある人の指導力にも個人差が存在する

・繁忙期、閑散期とがあり指導にバラつきが出てしまう

上記の環境の違いの中で、指導すべき重要事項が抜け落ちないように指導者が管理するのは限界があります。OFF-JTで仕事(業務、業界について)の基礎知識、基本を身につけておけば、指導に関して完璧な環境でないときでも、ある程度はOJTを進めることが可能になります。

⑴OFF-JT

【メリット】

・企業が必要とする要素を合理的に網羅して学べる

・同時(同じタイミング)で一斉に実施ができる(オンラインで全国から参加も可能)

・社外講師を呼んで専門知識を学べる

・研修に集中して教育ができる

【デメリット】

・会場(対面研修の場合)、社外講師、テキストなどに経費がかかる

⑵OJT

【メリット】

・OFF-JTで習得した知識をOJTで実践し、現場で経験を積むことで成長が期待できる

【デメリット】

・実務においては、期せずしての内容が多くなるため、必要な要素を前もって体系立てて

予定通りに網羅することが困難になる

『ロールプレイングを効果的に行うためには?』

スキルアップにつなげるためのロールプレイングを効果的に行うために、押さえておきたいポイントとして、

・ロールプレイングの目的をはっきりさせる

どのような対応力を身につけ、どのような課題を克服するのか、などの目的を明確にすることにより、具体的なフィードバック、アドバイスをすることができます

・シーンや場面をリアルに設定する

「初回訪問」「初回接客」「初回折衝」など、新入社員が今後の業務において経験するであろう場面を設定することで、新入社員もアドバイザーも目的意識が一致していて効果があります

・評価するポイントは何か事前に決めておく

身につけてほしいスキルを事前にリストアップします。点数やチェックをつけることで、課題が見える、良い点が明確化されフィードバックがしやすくなります

・フィードバックは具体的にする

ロールプレイングを観察して、良かった点は誉める、課題に関しては改善するべきポイントを指摘して、具体的な改善方法やアドバイスをします

【ロールプレイングのメリット】

・実際の業務にスキルを活かすことが期待できる

・グループワークと組み合わせたり、フィードバックなどを入れることで受講生同士のコミュニケーション能力向上にも期待ができる

【ロールプレイングのデメリット】

・フィードバックがないと、ロールプレイングでの体験のみとなりスキルとして定着しない

・ロールプレイングの目的や意図が理解不足のままだと、学習効果が低くなる

『ケーススタディの進め方とは?』

ケーススタディのポイントは「事例の問題を明確にすること」「解決方法や結論をアプトプットして共有すること」です。

・取り上げる事例を決める

新入社員が業務において参考になりそうな事例を集めます

・問題を明確にする

多くのケーススタディでは、一つの事例に対して複数の問題があるため、その問題の相互関係を把握し、解決の優先順位をつけます

・解決の方法を考える

明確になった問題の解決方法を考えます。まずは、思いつく解決方法をリストアップします

・結論の共有をする

グループで結論を共有し、思考の整理をかねてアウトプットします。正しい対応方法が一つとは限らないため、他の人の結論からも様々な視点や発想を学び取るのがポイントです

【ケーススタディのメリット】

・過去の事例を疑似体験し、事例の結果と原因について分析をすることにより、「リスク回避」につながる。なぜその結果になったのか、を明らかにすることで同じような事例を繰り返すことを防止することが可能となる

・ケーススタディにより常道を見つけることができれば、余計な試行錯誤をせずに済むため、時間の短縮ができる。ビジネスにおいてスピードは大きな武器になることを学び、最短で結果を出すことが期待できる

【ケーススタディのデメリット】

・研修を行う時間が長くなる

・多人数を対象とした場合、グループ分け、発表時間などの工夫が必要となり、研修の組み立てが難しく、インストラクターの負担になる場合がある

『レクリエーションがもたらす効果とは?』

【レクリエーションのメリット】

・参加者の緊張を和らげることができるため、研修前のアイスブレークや研修の合間に実施することで、リフレッシュにも繋がり、その後の研修をスムーズに進めることができる

・ゲームを通して、自然と会話が増えコミュニケーションが活発になる

・参加者の積極性や自発性が促される

新入社員研修のカリキュラム作成前に抑えたいポイント

⑴目標と合格基準の設定

新人研修の目的、期間など新人に「いつまでに」「どこまでの知識とスキルを身につけてもらいたい」のかを含む育成計画を考えます。

また、ひとくちに「新入社員」と言っても、研修内容を理解できるレベルは各々です。新入社員たちが、すでに社会人として必要なスキルがある程度身についている、1度聞けば理解できるのであれば、研修内容の難易度を上げる、合格基準を高く設定するなどの工夫が必要です。同じ内容の研修を行うにしても、各々の新入社員の理解度レベルとスキルは違うこともあります。研修カリキュラムを作成する前に、新入社員のレベルについて確認することが必要になります。

⑵新入社員の配属先上司、昨年の新入社員にヒアリング

新入社員に身についてほしい実践的な知識とスキルについては、新入社員が所属する部署の上司、教育担当になっている先輩社員から「人材育成計画、方針」を事前に確認する必要があります。その内容をもとにして、新入社員に必要な知識とスキルは何かを洗い出していきます。

また、昨年の新入社員に「新入社員研修でプラスしてほしかった内容」「配属されてから知識、スキル不足を感じたこと」をヒアリングします。

⑶期間の設定

企業それぞれの業種、研修内容や教育方針により、新入社員研修が数週間~数ヶ月と実施期間が異なります。実務メインのOJT研修を実施するのであれば、現場で段階ごとの教育方法となるため、入社して半年~1年ほどかけるケースも多いです。

研修期間を考えずに、研修内容だけを決めてしまうことにより、研修が中途半端に終わってしまう恐れがあります。その理由としては、研修で習得したスキルの定着度が不明なままになってしまうためです。そうすると「研修は実施したが効果が出ない」ということに繋がりかねません。

まとめ

⑴カリキュラムの内容を作成する前に「研修の目的」「期間」を設定すします。新人に「いつまでに」「どの程度の知識とスキルを身につけてもらうか」をスケジュール化します

⑵研修カリキュラムは、新人育成の目標が達成できるよう具体的な内容を細かく詰めて作成します。ただし新入社員は、すでに身についているスキル、理解度に差があることも考慮して研修内容の難易度、合格基準の設定をする

⑶「知っている」から「できるレベル」にするためには、中長期的な新人育成計画を立て、フォローアップ研修などを行うことで、習得した知識とスキルの振り返りだけでなく

定着度の向上の期待ができます

⑷カリキュラム作成のための代表的な教育手段には、それぞれに目的があります。新入社員のスキルアップに必要な目的を明確にして、教育手段をカリキュラムに組み入れることで、より効果的な新入社員研修を構築することができます

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