
新入社員研修では資料を活用する。
「2022年度新入社員の特徴と指導のポイント」資料(20p) 無料ダウンロード
新年度のスタート、そして多くの企業において新入社員が入社してくる4月、人事の仕事の一つとして、新入社員の受け入れや教育の対応があります。
入社時のオリエンテーションに加え、新入社員研修を社内で実施する企業も多いのではないでしょうか。
研修を外部の教育会社に委託する企業もありますが、人事部の社員等が講師を務め、社内で実施する企業も少なくありません。また、その場合には、数ヶ月も前から研修の準備を始めることも珍しくはありません。
新入社員研修を実施する際に、準備する必要があるのが「研修資料」です。資料を活用することで、研修の効果も大きく変わります。
研修資料を作成する目的と注意点
新入社員研修は、3ヶ月から長いところで6ヶ月の期間、研修を行う企業が多いです。近年は、入社すぐに配属を行ってOJTでの教育のみという企業は少なくなってきている傾向があります。それだけ、現場にすぐに適応できない新入社員が増えてきたからかもしれません。また現場でのOJTの担当トレーナー自体も、人員不足によって対応出来なくなっていることも原因の一つかもしれません。
研修を終え、配属後それぞれの職場で仕事に取り組みはじめると、実務面はOJTでフォローすることができても、「なぜその仕事をするのか」をしっかりと自身のなかで落とし込み、理解できていなければ、せっかくの研修も無駄になってしまいます。
新入社員が研修の趣旨を理解し、意欲的になって、1日でも早く、会社の一員として戦力となるように、意識を醸成するためには、やりがいや目標を持って仕事に取り組めるよう、企業や仕事の最終的な目的を共有できる資料が必要です。
趣旨として、企業が考えている人財像や企業の理念や行動指針、経営者の思いなどがわかる内容を資料に盛り込むことが求められます。まずは、仕事の基本を教えることですが、ここに思っている以上に時間がかかるのが今の新入社員です。インターネットやSNSの発達よって、情報収集力は目をみはるものがあり、社会の多くのことを「知っている」「分かっている」という自信を持っています。
新入社員は、企業人としてだけでなく社会人としてもスタートを切ったばかりなので、これらはできなくて当然ですが、それを教えていくのは私たちです。学生から社会人へと人生のステージが移ったことを理解できるよう、仕事の取り組み方や社会人としての心構えといった仕事の基本を教えて行くことが大切です。
例えば、基本的なビジネスマナーの解説を資料に含め、研修の場ではビジネスマナーを教ええると同時に「なぜビジネスマナーが必要なのか」を伝える必要があります。新入社員が研修内容の理解を深め、配属後にも引き続き資料を役立ててもらうためにも「分かりやすい」「見やすい」「使いやすい」ことを一番に考え作成するように注意してください。
研修資料を作成する前に
多くの企業様より、どのように作成していけばいいのかとご質問を受けます。まずは、新入社員に学んでもらいたい項目を洗い出し、実施したい内容をピックアップするところから始めることをおすすめします。
新入社員に学んでもらいたい項目を洗い出す
例えば、
・社内ルール
・コンプライアンス
・礼儀
・挨拶の仕方
・電話応対
・名刺交換
・言葉遣い
・報告のあり方
・携帯電話のマナー
・SNSの活用
・Emailの作成について
このように、項目を洗い出して、カテゴリー毎に分類した後、研修スケジュールにあわせて実施したい内容をピックアップした上で、資料作成に取り掛かると良いでしょう。
新入社員研修資料に取り入れるべき重要な項目
・社会人基礎
まず「社会人基礎」についてですが、会社のルール、時間管理、マナーなど、まず社会人として働く際にはどのようなことが大事で、身に付けなければならないか。また、お金をもらって働く以上、どのような社会的責任が課されるかという点をよく理解ができるように書き記しましょう。お金をもらっている以上はプロです。新人や1年生だからといって、取引先やお客様にはわかりません。全ての業務においてその責任を果たすことの重要性を認識してもらうことが大切です。また、挨拶、言葉遣い、姿勢、服装・身だしなみなど、当たりまえのことが、社会人になっても重要であること、学生以上に大事になることも忘れずに。
・仕事の知識
会社組織には、指示・命令というものがあります。会社の知識、仕事の知識も重要なポイントです。命令は基本、直属の上司から受けることになります。もしも、他の方から指示・命令があった場合には、直属の上司に報告し確認をします。
・正しい仕事の受け方・・・
(例:常にメモを持ち、よく聞く、黙って聞く、最後まで聞く、メモを取る、復唱する)
・報告、連絡、相談・・・
(例:上下、左右、斜め、前後、仲間、関係部門部署、お客様)
・専門分野・・・(例:営業の知識)
・指示・命令の受け方・・・(例:指示を受けたら「ハイッ」と返事をし、行動する。
かけつける)
・企業理念
会社の存在意義が企業理念、経営理念とも言われます。自社は、なんのために存続しているのか、存続している目的は何かを伝えることは企業として何よりも大切です。理念教育に力を入れている企業も増えてきたように思います。ただ、経営理念という言葉は理解していても、本質を理解している新入社員は少ないと思います。ここは、重要な箇所であるため、詳しく、理解できるように資料に書き記すことをおすすめします。新入社員にとって魅力的な資料内容というのは、「すぐに活用できる内容・情報」が組み込まれていることでもありますのでそれを意識して企業理念を説明しましょう。
・社内ルール
新人において、まず求められることは、会社の規律、ルールを守ることです。時間を守る、約束を守ることは、同じ会社で働くスタッフと協調性をもって仕事をする上で大事なことです。「新入社員が入社後すぐに即戦力となるための内容」がまず求められるもので、そのための資料作成が必ず求められることになります。新入社員研修を終えた後、さらにその企業で独自に取り決めているルールを守らせることも、その企業で勤続していく新入社員にとっては非常に大事な点となります。
・スキル向上につなげる内容
新入社員がその企業へ入社して、その後からすぐに即戦力となって働くことができるように、その研修内容・資料作成方法をしっかり行う必要があります。スキルにするには、反復が必要になるため、資料も繰り返し使えるように工夫をして作成すると良いでしょう。研修というのは結果的に「理念をもとに、社員のあるべき姿を確立するために必要なスキル・能力」を磨くために実施するため、それに向けての資料作成が必須となるのは当然になるでしょう。研修が目的なのではなく、スキル取得が目的になるように資料の作成を考えましょう。
研修資料の作成手順
研修内容にマッチするテンプレートを利用する
ゼロから独自で作成をするとなると、手間も時間も膨大にかかってしまいます。また、過去に作成の経験が全くなければ、構成やボリュームを考えるだけでもあっという間に時間が過ぎてしまいます。
人事担当の皆さまは、教育対応だけでなく、採用・雇用の管理、労務管理など、組織の人材管理に関する幅広い業務を担っており、資料作成だけに時間を割ける方はほとんどいないでしょうから、作成の途中で頓挫してしまうぐらいなら、始めから外部の専門会社に発注するほうが、効率的かもしれません。
それでも、「自社で作成したい」という方におすすめなのが、テンプレートを活用する方法です。今は、インターネット経由で驚くほどクオリティーが高いものを、無料で活用することもできますので、初めて作成する方にとっても役立つでしょう。
「新人研修資料 テンプレート」で検索をすると、本格的なものからシンプルなものまで、様々なテンプレートを見つけることが出来ます。目的にあったものを選び活用すると良いでしょう。ただし、著作権には十分に留意して活用してください。
研修と整合性がとれた構成づくり
研修資料を作成する目的は、復習と理解することを助けることにあります。たった一度の研修実施のみでは、すぐに身につけられるものではありません。復習も、ノートを見返す程度では足りないので、研修後、何度でも見返し、振り返ることができる資料でなくてはなりません。
研修中に今教えられていることは、どこに載っているのかと資料内を探さなくていいよう、必ず研修の流れに沿って資料を構成しましょう。
研修のゴールを設定し、ゴールに向けたプログラムを作ります。プログラムに基づいて資料を用意することになりますが、テーマごとに分け、わかりやすく構成することで、新入社員にも伝わりやすく、後で資料を見返した際も研修内容を思い出しやすいことが期待できます。
難しい言葉は極力避ける
作り込まれた資料が、必ずしも良い資料とは言えません。使う人が理解できなければ意味がありません。研修資料で使用する表現は、漢語は極力少なくし、曖昧なもの、抽象的なものではなく、具体的に記すとよいでしょう。新入社員には、専門用語や企業独自の言葉は分かりません。これらの用語を私用する場合は、欄外に注釈をつけるとよいでしょう。
研修の報告ができるようなページを設けるものおすすめです。この章で、学んだことなど章ごとに自分が理解したことを書き出すページがあると復習する際に、記憶を辿ることもできます。
投影用資料と配布用テキストの作り方は変える
セミナーや講演で大画面に投影する資料は、パワーポイントでの作成が主流だと思います。プロジェクターや各自のパソコンに投影するものとしては、視覚的にわかりやすいパワーポイントはとてもマッチしています。
情報が多すぎると理解に時間がかかるため、研修時間内で伝えることのできる必要最低限の情報を凝縮して表現することが大切です。
新入社員に配布する研修テキストであれば、ワードでの作成をおすすめします。
解説部分については、文字だけで表現せずに、事例、図解、イラスト、イメージ図を入れて、分かりやすくすることが大切です。言葉では伝わりにくいデータ、相関図など研修資料に視覚的な解説を用いることで、視覚的にも理解を深めることができ、文字情報単体よりも記憶に残りやすく、研修内容の理解や知識の定着につながります。
名刺交換について説明するなら名刺を交換している手元の写真、会社の事業規模など具体的な数値や指標を見せるならグラフなど、視覚に訴える資料作りを心掛けましょう。
的確に講師が伝えるだけでなく、新入社員がその知識を習得して、継続して実行出来るようにならないと、研修を実施した意味がありません。そのためには、後からテキストを見返して、研修内容が確認できるようにしておく必要があります。
白黒印刷の際にはこのように
費用の面から、配布用テキストはカラーではなく白黒での印刷にしたいという企業もあるかと思います。
その場合、「フォント」を効果的に活用することにより、白黒印刷でも視覚に訴えかけることができます。文字の多いページは、選ぶフォントによって、テキスト全体の読みやすさも大きく変わってきます。「ゴシック体」の中から選ぶと視認性が良いでしょう。
Windows標準搭載のフォントの中から、使いやすいおすすめフォントを3種類お伝えします。
1.「MS P ゴシック」
2.「HGS創英角ゴシックUB」
3.「HGP創英角ゴシックUB」
新入社員が使いやすいテキストを作成するために
テキスト・資料を準備する目的は既にお伝えした通りです。新入社員が使いやすいテキストを作るためのチェック項目です。
□書き込めるスペースがあるか?
□レイアウトは、上下や左右の余白が詰まりすぎていないか?
□回答が一つと決まっているもの(例:自社の経営理念)は、正しい内容で記載しているか?
□難しい言葉や専門用語を多用していないか?
□内容を詰め込み過ぎていないか?
□文字だけでページを埋めるのではなく、図表、イラスト、画像などを用いているか?
□現場で実践できるような内容が含まれているか?
□ロールプレイング等の実施が決まっている場合、必要な資料やデータが入っているか?
新入社員研修・資料自体もブラッシュアップしていく
新入社員が研修内で学んだこと、感じたことをヒントに、研修自体もブラッシュアップしていくと良いでしょう。