採用力を高めるには面接官の教育は必須!
ここ数年、就活市場では売り手市場が続いており多くの企業にとって人材の確保が大きな課題となっています。特に、自社の魅力をPRする機会が少なくなりがちな中小企業などでは、深刻な人手不足となることも懸念されるのではないでしょうか。
人材の確保が難航しがちな中小企業にとって、有望な求職者に内定を出し入社へとしっかり導いていくことは面接官の重要な役割です。今回は、中小企業の採用力強化にむけて面接官にどのようなスキルが求められるかを整理し、それを踏まえて面接官を育成する方法について解説します。
企業が人材を確保するためには、応募が集まるのをただ待つだけではなく企業側自らが「採用力」を強化していく必要があります。こうした考え方で採用活動に臨むことは、近年のように売り手市場が続く状況では一層大切になります。
またそもそも、大手企業と中小企業の採用には大きな格差があるため、特に中小企業では面接官のスキルアップの必要性は非常に大きいでしょう。
有効求人倍率にみる大手と中小の企業格差
リクルートワークス研究所によれば、2019年に行った調査(「第35回 ワークス大卒求人倍率調査」)において、5,000人以上の大企業の求人倍率はわずか0.37倍であることが明らかにされました。一方、同調査では、300人未満の企業(中小企業)では9.91倍であることも示されています。
有効求人倍率の推移を従業員数で区分けすると、就活生の多くは従業員数が少ない中小企業よりも、従業員数の多い
大手企業の求人に殺到している実態が明らかになります。このように大手企業と中小企業の有効求人倍率に圧倒的な
格差があることは、採用力強化の重要性を裏付ける大きな要素といえるでしょう。
就活スケジュールの早期化も格差拡大の一因に
就職活動のスケジュールは21年度卒から政府主導で決定されることになります。これにより、経団連主導だった頃と異なり、早い段階から内々定を出すことも可能となりました。早期に青田買いをおこなう大企業が増えれば、中小企業の採用は一層難航することが懸念されるでしょう。
面接官に必要なスキルとは?
厳しい情勢を踏まえれば、一連の選考プロセスのなかで有望な求職者と距離を縮め信頼関係を築いていくことが重要です。
では、選考プロセスを途中で抜けられてしまったり、内定を辞退されてしまったりしないためにも面接官はまずどのようなスキルを身につけておくべきなのでしょうか。
コミュニケーション能力とは、具体的にいうとなにか?
企業が求職者に求めるものとしてよく上位にあがるのが「コミュニケーション能力」ですが、この意味は多義的です。
例えば、コミュニケーション能力の一つには質問力がありますが、これを具体的にいうと要領よく短いやりとりで必要な情報を聞き出す力、コーチングなどのように相手から自由な連想・自発的な自己表現を引き出す力となります。
さらに、魅力的に自分を表現しプレゼンテーションをおこなうことや、相手の話を傾聴し、本音で話せる機会を他者に提供することも、やはり一種のコミュニケーションであるはずです。
ひとえに「コミュニケーション能力」といっても、適切なコミュニケーションのあり方はその時々の状況によって変化します。
面接官がまずこうしたコミュニケーションの多義性を理解したうえで求職者と対話し、配属予定の部署が負う役割・会社のフェーズなどを踏まえた人選をおこなえるようになることが大切といえるでしょう。
なお、コミュニケーション能力というものの多義性は、後述の通り面接官の役割を複雑にする一因でもあります。
面接官に求められるコミュニケーション能力も多義的である
採用面接の担当者が求職者ととるべきコミュニケーションのあり方には、実は多様なバリエーションがあります。
面接官にはまず前提として、将来性のある求職者を見抜くという役割があります。ときには批判的な質問を投げかけ、相手の思いや覚悟・人生設計の軸を問うことが必要な場面もあるでしょう。
しかしそれだけではなく面接官には、自社のことを求職者に知ってもらえる数少ない場として面接を活用し、自社の魅力をPRする役割もあります。前者と後者は必ずしも矛盾するものではありませんが、求職者の能力・適性を素早く見抜きつつ、 コミュニケーションの取り方を切り替える柔軟性は非常に重要となってくるでしょう。
面接官の教育のポイント
こうした面接官の役割の複雑さを踏まえ、面接官を教育する際のポイントとしては、次のようなものがあるでしょう。
面接は求職者のために「してあげる」ものではない 採用面接は求職者が企業の採用担当に「時間をとって会ってもらっている」という側面もあります。しかし、そうした 関係の非対称さから、求職者に横柄な態度を示してしまえば、有望な人材が離れていきかねません。
採用は企業にとっても重要な課題であり、求職者一人ひとりの人生だけでなく、企業の将来もかかっているという自覚を 持つことが、まずは大前提となってくるでしょう。
面接官の仕事では一定の知識も必要となる
また、一定の知識を持つことも面接実務では大切です。例えば、ハラスメントや差別・人権侵害となるような 質問・言動にあたるものを理解し、これらを避けることは面接官の重要な仕事です。
特に最近では、こうした疑いの強いやりとりがおこなわれた実態がSNSなどで晒され、大きな反響を呼ぶことも あります。これまで以上に一層注意が必要でしょう。
必要な知識はこれだけではありません。採用面接の担当者は必ずしも社内全体の詳しい様子を把握しているとは 限らず、現場には隠れた「自社の魅力」があるかもしれません。
自社の魅力をPRすることも面接の目的となりうるため、こうした知識もしっかり収集しておきましょう。
おわりに
採用力の向上・面接官の育成は決して簡単ではありません。しかし、多様なコミュニケーションのあり方が受容される文化を社内で形成することや、採用面接における求職者とのコミュニケーションのあり方を柔軟なものにしていくことが、その大きな一歩となるでしょう。