
1. オンライン研修で、受講生の集中力を保つには?
オンラインでの新人研修において、特にZOOMによる研修での、留意点をまとめました。
1-1.何時間の研修にしたらよいのか?
オンライン研修を開催するにあたって、最適な研修時間は、と悩む場合も多いかと思います。 集合型研修と違い、オンラインの場合、特にPCやタブレット1台が各受講生に配布されている場合は、終始画面を見ながらの受講です。また、研修会場へ移動することはなく、通常の勤務場所や自宅で受講することもあるでしょう。
これらを考慮して、2~4時間の研修時間をご希望されるケースが多いです。 昼食休憩を60分間はさむ場合は、研修時間6時間ということは十分に可能です。その際の注意点としては、あらかじめスケジュールを開示し、60分または90分に一回、休憩を取るようにすると良いでしょう。これは大学の講義の時間をイメージすると良いかもしれません。
1-2. 受講生が集中していられるのは?
一方で、受講生がPCの前で集中していられるのは、20分が1つの目安です。なぜならば、エビングハウスの忘却曲線のグラフによると、人は何かを学んだ時、20分後には42%を忘れると言われており、短期記憶を保持するのが難しくなります。そこで、20分でひとくくりとするのがオススメです。その20分の間に復習の時間や、アウトプットの時間までをも組み込むことが重要です。あの手この手と使い、アウトプット方法を工夫していきましょう。
もう一つ、元NHKアナウンサーの堀尾さんによりますと、ニュースは70秒程度しか視聴者は聞いていられない、という情報もあります。そこから推察するに、オンライン研修では、講師が3分、5分と説明するのはお勧めしません。集合型研修以上に、講師は短く、端的に話す。そして、パワーポイント資料がある場合は、パワーポイントの文字をそのまま読みましょう。
1-3. 受講生に適度な緊張感を持たせるには?
受講生の心情として、次のようなことはないでしょうか。「画面越しだから、手元のスマホをちょっとくらい触ってもばれないだろう」「講師は、全員のことまでは見ていないだろう」「研修中だし、このくらいは大丈夫だろう」「この講師の言っていること、まったく共感できない」「早く休憩にならないかな」といった、気持ちです。 これらは否定しても仕方ないことです。オンラインの特性上、こういった気持ちを抱きやすい、ということは織り込んでおきましょう。
それでは、講師はどうすればよいのでしょうか。それは、参加者を指名するという方法の選択をすることです。この場合、「本日のオンライン研修では、発言者を指名することがある」と冒頭に一言、予告しておくことが重要です。加えて、個別の指名はなくとも、参加者に発言を求める場面を繰り返し用意することによって、「今日のオンライン研修は、ボーッと聞いている受講スタイルは不適である。発言を求められる、参加型スタイルなのだ」という理解のもと進めていきます。それにより、オンライン研修の受講者に、適度な緊張感を持たせることができるのです。
1-4. 受講生のやる気を引き出すには?
オンライン研修であっても、集合型研修であっても、やる気を引き出すには、共通項があります。それは、受講生の変化や行動を言語化し、「褒める」ことです。「褒める」は、「おだてる」とは異なります。もちろん、求めるレベルまで未達であれば、改善を求めるフィードバックをしていくことも重要です。ただし、改善行動が1つでも見られたのであれば、その行動を褒めていきましょう。そのためにも、よく新入社員の行動を見て、変化を見つけることが必要です。オンライン研修において、画面越しであっても、是非褒めてみましょう。ただし、褒め言葉には細心の注意を払いましょう。
私どもが、研修の仕事をするにあたって、各企業の人事採用責任者の方や、受講生の上司、お取引のある講師の皆さま、と様々な方とお付き合いがあります。そんな時によく上る話題としては、「褒める」のが難しいということ。難しいと感じる理由は、「自分自身が褒められた経験が少ないから」というのが多いのが実際です。
とはいえ、受講生が研修に参加する時に、集中力を維持し、やる気を出すためには、「褒め」の技術を使わない手はありません。「褒め」まで行わずとも、ちょっとした、受講生の発言や行動に対して、承認をするだけでも効果があることもあります。 「褒め」が不得手だという方は、まず受講生の行動を良く見て、好ましい行動や正しい行動をしているのを見つけ次第、その場ですぐに言葉にして伝えると良いでしょう。最初はなかなかうまくいかないこともあります。焦らず、コツコツと褒めていきましょう。
褒める時に使う言葉のボキャブラリーも重要です。事前に褒め言葉のパターンをいくつか準備しておくのも良いでしょう。褒めるべき瞬間というのは、突然やってくるからです。 特に、オンライン研修では、集合型対面研修とは異なり、ノンバーバルメッセージは伝えにくいもの。そのため、バーバルコミュニケーションが主体とならざるを得ません。だからこそ、褒め言葉を数多く伝えていくことが大切なのです。なお、言葉の内容と表情、声色は合致していないと相手に伝わりません。くれぐれもしかめっ面で褒めることはないように注意しましょう。
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2.オンライン研修で、実務に直結する場面を想像させる

新入社員にとって、集合研修は「非日常の経験」です。研修の一コマ一コマに、様々な気づきや学びがあります。また、研修の独特の雰囲気から、普段よりも数多く発言をする、率先して行動するということも十分にあり得ます。
これはオンラインによる新人研修でも同じことが言えます。オンラインの画面越しとはいえ、日常業務から切り離された世界において頑張る、ということは比較的取り組みやすいものと言えます。
だからこそ、せっかくの経験を無駄にしない、「研修のための研修」にさせないことが重要です。そのための仕掛けについて、考えていきましょう。
2-1. 研修での質問内容について
研修中には、それぞれの単元や項目ごとに、現場をイメージさせる質問をしていきましょう。「この内容は、現場の作業において、どのような場面で役に立つか?」「現場のどのような問題を解決するのに役立ちますか?」「この知識や学びは、現場のどのようなシーンに活かせますか?」といった問いかけを行いましょう。 また、必要に応じて、簡単で構いませんのでロールプレイングトレーニングを行います。記憶の定着と同時に必要な時にそれを用いることを想定してもらいましょう。
2-3. プラスとマイナスを検討していく
物事は、損得だけでは割り切れませんが、作業や業務を行う上で、「今学んだ知識やスキルができるようになった場合のプラスは?」「知識やスキルの習得が不十分だった場合のマイナスは?」を考えておくことによって、思考の幅が広がったり、手順を効率化したり、ということが可能です。
せっかくの知識やスキルも、ただ良い話を聞いただけでは、無意味です。それを実行したくなるための動機づけが必要です。そのためには、プラス(メリット)やマイナス(デメリット)などを考え、ディスカッションを行うのも効果的です。ただし、新入社員の皆さんだけの研修の場合、ディスカッションにならないということも起こる点は、配慮が必要です。
2-3. 研修の振り返りを実施〜現場でどの内容を使ってみたいですか?
“ピークエンドの法則“とも言われるように、最後の研修内容が最も印象に残ります。だからこそ、「研修アンケート」で終わりたくはないですよね。「研修の感想」だけでももったいないのです。受講生によっては、「とても良い研修でした」「とても貴重な機会をありがとうございました」といったコメントで終わってしまっていませんか?これは、受講生の感受性やスキル、理解度の問題だと思われがちですが、そもそもの研修の設計を見直すことも考えてみましょう。
研修の最後には、「本日の研修の振り返り」を行いたいもの。4時間でも、6時間でも、一日の学びを振り返り、「現場でどの内容を使ってみたいか?」と問いかけを行いましょう。一つでも二つでも良いのです。これがあるだけで、本人の意識の変化の度合いは変わってきます。また、実際に現場で行うにあたっての障害やハードルも予め想定しておきましょう。どうやってそれらを乗り越えるのか、を考えておくのです。実践できた時の充実感を予測してもらう、というのも効果的です。
2-4. 研修後、継続できるような仕組みとは?
研修終了後、企業としては、受講生の皆さんに良き行動を継続してもらいたいものです。そのための仕組みを考えてみましょう。
1.アクションプランの作成
研修で学んだ感想やアンケートだけではなく、具体的に何をどうするかというアクションプランを立ててもらう、というのが有効です。 その際に、是非ともプラスしてほしいのが、上司によるフォローです。アクションプラン自体に無理がないか、具体的な内容になっているか、是非とも第三者の目でみてアドバイスをしてください。
2.行動宣言
研修中に宣言することはもちろんのこと、職場に戻ったら、まずは上司に対して、受講報告を口頭ですることを求めてください。その場合、口頭報告においては、事細かくは不要です。細かな内容は、ワードなどのデータ提出で問題ありません。それ以上に、報告してもらうべきことは、「振り返り」です。ご自分の日ごろの業務にどうやって生かしていこうと考えているのか、具体的に何をするのかという内容です。 そして、是非とも5W2Hなどの詳細について、実行宣言をしてもらうと良いでしょう。
3.毎日の報告
研修で学んだことをどのように実践しているか、日報などの報告ツールがあれば、そちらに組み込んでも良いでしょう。特別なフォーマットは不要です。すぐに実行に移すことができます。この場合、注意したいのは、上司が研修で何を学んできたのかを知っておくことが重要です。まずは、研修受講の報告を求めましょう。そして、書き漏れがないかを本人にもチェックさせることが必要です。万が一、実践をしていない、行動に村があるなどが見つかった場合は、早急に改善策を求めていきましょう。
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3. オンライン研修で自分事化を推進する

オンライン研修の場合、講師はPCやタブレットの画面の中にいて、目の前にいない状況です。そのため、どこか他人事、と感じやすいという側面があります。テレビを見ている感覚に近い、というとご理解いただけると思います。 もちろん、面白ければ惹きつけられるでしょうが、オンライン研修は、テレビのような大掛かりなセットや背景もありませんし、特別な照明効果もなく、人気芸能人やお笑い芸人もいない環境です。
3-1. 「自分事化」するにはどうしたらよいか?
それでは、どのようにすれば、他人事が自分事になるのでしょうか?
その答えのヒントとして考えたいのは、youtubeの世界です。Youtubeの世界では、登録者数をいかに増やすか、どうやって最後まで見てもらうか、広告収入を得るにはどうしたらよいかの目標を達成するため、飽きさせない工夫をしているのはご承知のことと思います。 例えば、中田敦彦さんのyoutube大学。背景にしている手書きのホワイトボード。これがあるだけで、パワーポイント等の資料がなくても、動画の内容が気になり、ついつい最後まで視聴してしまう、ということもあるのかもしれません。また、なんといっても、中田さんの抑揚や緩急のある話し方と、豊かな表情!冒頭にジェスチャーをつけるなどのアクションも特徴的です。
ここから分かるのは、画面越しであっても、話し手のエネルギーの多寡が伝わってくるということ。画面の向こうで見ている人への影響度が左右されるのです。そして、いつしか、テレビを見ている感覚から、目の前で自分一人へ向けて講義や授業をしてもらっている感覚に変わるのです。
3-2. 具体的にすべきこと
芸能人ではない研修講師や、人事の研修担当の皆さんが、これらの要素をオンライン新人研修に取り入れるためのコツをまとめてみます。
1.目線はカメラを見る
ついつい、ZOOMですと、画面越しの新入社員の顔を見てしまいます。もちろん、観察することは重要です。しかし、ずっと新入社員を見て話すのは、受講側からすると、講師と目線が合わない、常に視線が動いていて落ち着きがないように見えるのです。 これでは、講師のエネルギーが伝わりにくいのです。だからこそ、「ここぞ」という重要なメッセージの際は、PCカメラを見ましょう。カメラの後ろに誰か一人、ご自分の好きな方が立っているつもりで話しかけるのです。
2.声を張る
声に関しては、近くで誰かと話すというのでは、新入社員に全く届きません。怒鳴る必要はありませんが、声を張る必要があります。声の高さも重要です。キンキンとした高めの声は、ヒステリックに聞こえます。また、軽く聞こえてしまう場合もあります。一方で、低めの声だけを使うのも、表情が暗くなりがちで、「怖い」印象を与えます。コンテンツの内容によって、声の高低を使い分け、抑揚のある話し方をしていきましょう。集合型研修以上に、発声練習や活舌練習が欠かせません。
3.エネルギーを3倍出す
エネルギーというと漠然として聞こえるかもしれません。それは、反応の速さだったり、反応の大きさだったり、笑顔の質や、表情の変化なども含めて、3倍にすると捉えると良いでしょう。オンラインはとかく、無表情、無反応に映りがちです。一般的な生活において「それは、ちょっとオーバーリアクションでは?」というくらいにすると、ちょうどよいのです。拍手1つも、ちょっと手をたたくではなく、全力でたたくということです。
なお、拍手の音自体は、受講している場所において不適なこともあるため、エア拍手をする、というのも選択肢の一つです。
3-3. 受講生を惹きつけるための工夫
さて、次に、受講する側、受講生や参加者の課題を解消しましょう。それは、どうしても参加する気持ちになりにくいということです。画面での講義を見ている感覚になると、手もとでスマホを触る、他の作業もしたくなることでしょう。もちろん、研修であっても仕事だ、と言ってしまえばそれまでですが・・・。 工夫できる点を考えてみましょう。
1.名前を呼びかける
オンライン研修においては、講師が一方的に説明するのではなく、新入社員の名前を呼びかけます。そのため、スタート前に、一人ひとり名前を呼び、「音声は届いていますか?」など、あえて名前を確認していく、というのも効果的です。
2.言葉を工夫する
有名youtuberのマコなり社長さんが使うように、「あなた」という言葉で呼びかけてみる、というのもポイントです。「私と同じくらい、“皆さん”の人生も最高なんです」と言われるのと、「私と同じくらい、“あなた”の人生も最高なんです」と言われるのとでは、後者の方が、自分事に感じやすく効果的です。
3.発言を求める
発言や意見を求めるという場面を多くします。受講生の発言が長くなるということであれば、発言は一人30秒以内と、予め決めておくとよいでしょう。また、突然指名することは嫌い、または苦手と感じる新人に向けて、冒頭に「本日の研修はいきなり指名することもあります」と一言伝えておきましょう。
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4.オンライン研修に、積極的に参加させるには

4-1. どうして消極的、受け身になるのでしょうか?
・研修内容に興味が持てない
・研修内容について、受講生が、自分の役に立つものだと考えていない
・受講生の現状のニーズやレベルにあっていない
・研修以上に、気にかかる業務がある。または業務に忙殺されており、研修のことを考える余裕が持てない
・研修を一生懸命に受講しても、評価に直結しない
・研修を仮にさぼっても、ペナルティがない
・受講する側が近視眼的思考や発想しかできていない
・事前に、人事担当者や上司が、受講生に研修の動機づけをしていない
など、様々な問題点が推測できます。 解決するのが難しいものもあるかもしれませんが、是非とも、研修の効果を受講生が最大限に享受するためにも、事前に研修の必要性や狙いなどは、伝えてから参加する仕組みを用意しましょう。
また受講後もフォロー体制があるということを伝えておくことで、受けっぱなしではダメなのだという理解ができます。そうすることで、管理する、とはいかずとも、継続する仕掛けが可能となります。
4-2. 2:6:2の法則とは?
研修を実施するにあたっては、2:6:2の法則が当てはまる合があります。
2割が積極的に参加し、6割が可もなく不可もなくの態度で参加し、残りの2割が消極的な参加に見える、というものです。しかしながら、研修というのは、集団心理が働くため、8割の受講態度がプラスであれば、残りの2割の方もそちらに引っ張られます。また、研修をするからこそ、全体の8割にプラスの影響が起きるのは素晴らしいことです。研修をしなければゼロなところが、変化が起こるのです。だからこそ、研修を実施する企業においては、効果や変化の少なかった2割を見るのではなく、全体を俯瞰して結果を判断いただきたいところです。
4-3. 効果が出やすい研修を実施するには?
積極的に新入社員が参加できる研修プログラムとは?
(1)研修内容が、現場や職場で役に立つことが理解できる
(2)反復トレーニングがあって、身についたことが実感できる
(3)自己の現状レベルより、少しだけレベルが高いもの
(4)一方通行で、講師の話を聞くだけではなく、双方向のやり取りがあるもの
(5)他の受講生とも交流ができ、講師以外からも学ぶ機会があるもの
これらの5点は、既存の集合型対面研修では十分に可能な内容です。そして、オンライン研修においても十分可能な内容です。
それ故、研修プログラムを作成する時には、これらの5点について、十分に時間を取るなどして、工夫して組み立てることが重要です。 プログラムのカリキュラムについても、受講生が迷わないように、綿密に立てておきましょう。また、指示は明確に、何をどのように、どのくらい行えばよいのかを伝えましょう。
新入社員が積極的に参加できる研修を行えるかどうかは、事前の準備次第。巻き込みながら、良い研修を提供していきましょう。 最後に、新入社員の皆さんへ、理解できた時の反応を決めておくのがオススメです。ZOOMの反応ボタン「いいね!」を押す、両手で大きなマルを作る、OKサインを作るなども効果的です。
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