新入社員研修のカリキュラムと内容
新入社員研修とは、一般的に、新卒で入社した新入社員に対して行う研修のことを言います。実務をこなす中で、大切な知識やマナー、配属される部署や仕事、業務についての知識を学んでいきます。
会社によって、どのレベルまで行っていくかは、差がありますが最近は、短い時間で研修を行いOJTで学んでいくことも多いようです。
新卒の新入社員研修は、実際の業務以外にも社会人としての礼儀や礼節、マナーやスキルを習得します。新卒の新入社員は、アルバイトの経験はあっても、会社員として働いた経験はないため、働くうえで仕事に対しての心掛けや一般的なマナー・基礎的な常識なども学ぶ必要があるからです。しっかりと社会人として働けるようになるよう新入社員研修では、人間力も身につけます。
そもそも、新入社員研修の目的とは何でしょう?
一般的に、新入社員研修とは、新卒で入社したばかりの社員を対象に行う研修のことです。
昔とは違って、学校や家庭で躾がされていない方も多くなってきていることもあり、礼儀・マナーの研修は多くの企業が行っています。
内容は、特に学生から社会人へのマインドの切り替え、ビジネスにおける基礎・社会常識・技術の習得です。
1~3ヶ月の間に集中して行う場合もあれば、1~3年かけて長期的に行う場合もあります。期間については、会社によって大きく異なるのが現状です。
実務の現場を知るために、社内見学や工場見学を行う会社や、チームワークを養うため合宿を行う会社もあります。どんな研修をどれくらいの期間実施するかは、新しく入ってくる社員のレベルに応じて決めることが大切だと言えるでしょう。
新入社員研修の内容を考えるときのポイント
新入社員研修内容を考えるときにどのようなことに注意すればよいのか触れていきます。
期間
始めに期間を考えることで、どのようなことができて、どのようなことができないのか把握することが大事です。あれもこれも行いたいのは分かります。しかし、時間は有限です。
その為、研修内容を決める際は、どのくらいの期間を使って研修を行うことが可能なのかを確認する必要があります。平均的な新人研修期間は約1ヶ月から3ヶ月と言われていますが、企業によって設定している研修期間は異なります。始めに時間をかけないと、後から
時間をかけないといけなくなるケースがありますので、注意が必要です。
目的
当たり前のことのようですが、目的の明確化です。目的を明確にすることで、受講する新入社員にダイレクトにメッセージを伝えることができます。研修を実施した後のあるべき姿が見えてくるため、研修内容を作成する際は、目的を明確にしてください。
研修実行の目的を受講者にも共有することで、研修に対しての主体性を上昇させることもできます。その為、具体的に研修後にどうなるための研修なのか、自社がどのような問題や課題があって、これを解決するためにどのように教育していくべきかなどを考えるとよいです。研修内容を考えることが難しければ、過去の研修内容や成果を参考にするのもひとつの手です。
レベル感
レベル感とは新入社員の能力を把握しておくことです。新入社員のレベル感を把握したうえでカリキュラムを作成することで、新入社員がそれぞれの自分のレベルに合った内容の研修を受講することができ、研修の効果を高めることができる可能性があります。
研修内容への理解がより深まり、成果において双方にとっても達成感の高い研修を行えます。適した方法で行うことによって、より研修効果を得られる可能性が上がりますので、行う研修がどの方法が向いているのか、しっかり考慮することも重要です。
新入社員研修の内容とカリキュラム
では、プログラムやカリキュラムは、どのような形式で伝えるのがよいのでしょうか。
ここで、いくつか形式についてお伝え致します。
ティーチング
ディーチングとは、授業のように、講義形式で行われる研修のことです(座学)。
一度に全員が同じ内容を学べるので、とても効率の良い研修スタイルだと言えます。
特徴としては、知らない知識を講師が一方的に伝える形が多いです。
「企業や事業内容の理解」「労務関係・コンプライアンス」といった内容を教えるのに適しています。実践には、不向きなので、ワークやロールプレイングも合わせて行うことで効果的になります。
OJT
OJTとは、実務のなかで業務に必要なスキルを学ぶ形式です。
研修というよりも、上司、先輩について学ぶといった方がよいかもしれません。
配属先で上司や先輩から指導してもらえるため、より実務に即したノウハウを身につけられます。集合研修のカリキュラムをOJTの担当者にあらかじめ伝えておくことで、指導内容をリンクでき、相乗効果を生み出せます。
ロールプレイング
ロールプレイングとは、実戦形式の講義のことです。体で覚えるものです。体験してスキルを身につけられるので、短時間でも効果を高められます。笑顔の練習や挨拶の練習、このようなことをロールプレイングで体得します。新入社員の実演に対して、指導役が丁寧にフィードバックすることでよりスキルアップが見込めます。
ワーク
ワークとは、数人でグループを作り、そのなかで、ディスカッションやアイデアの創造、ゲームを行うことを言います。協調性が重要となり、意見の異なるメンバー同士が一つのグループとなり、作業ゴールに向かって進めるので、「チームワーク」などを学ぶのに適しています。また、ゴールとして、グループごとの意見を発表し合う場面を設定すれば「プレゼンテーション」の能力習得の場、にもなるでしょう。
新入社員研修の内容も大事だが、目的が大切
新入社員研修の目的を明確にする
新入社員研修を行う、大前提として、「目的を理解してから、研修を受けてもらうこと」が大事と考えます。どうして、研修が必要なのか、受講することによって、どのようになってほしいのかを、明確にすることが大切です。目的を明確にしないで、受講させたとしても
本来、期待する成果が現れない可能性が高いです。
受講することで、なにか変わるのか。将来どう役立つのか、理解できるように説明し、目的を持って受講してもらうことを意識して下さい。目的がはっきりすればするほど、研修の効果も変わってきます。
研修を設計するときもそうですが、効果やゴールを先に決定して、そのために何をどのように行っていくかを考えていく必要があります。そして、実施後の定着を考えて、フォローアップのカリキュラムを考えておくこともよいでしょう。
新人研修の場だけで終わってしまう
挨拶や名刺交換の仕方、礼儀やマナー、報連相の重要性、言葉遣いなどや経営理念や社内ルールなど独自のカリキュラムを使って新入社員研修を行うと思いますが、現場に戻ると挨拶ができない、報連相ができない、自社のサービスや商品についても充分に理解していないなど、研修で教わったことが定着していないことがあります。これらは研修を受ける新入社員のマインドセットや、研修の指導方法、カリキュラム等に原因があるかもしれません。
研修内容が現場のニーズに合っていない
新入社員研修の内容を習得したにもかかわらず、それが現場でまったく活かされなかったというようなことが起こるケースがあります。例えば、報連相はマメに、少しでも疑問を持ったら相談すること。そして挨拶は元気に行うことを教えたとします。しかし、現場では、上司、先輩は多忙を極めており、報告をまめにしたことが先輩の邪魔になり煙たがられ、一定の業務範囲までは、自らが主体的に行動することを強く求められる職場だった、ということもありました。このように、現場からは、一律の新入社員向けの報連相のルールといった、表面的な内容ではなく、もっと実務につながる研修をしてほしいとの要望があるのも事実です。しかし人事部門においては、現場と物理的な距離もあり、なかなか実際の要望を聞きに行くことができていない。そのため、現場においては、研修は無駄なものとして諦めムードがあり、配属された新入社員はまたイチから指導するというようなことが、実は多くの企業でおこっているのです。
新人社員研修 内容と傾向
新人研修は9割前後の企業が行っている
ある調査会社の新入社員研修に関するアンケート調査によると、上場・非上場の企業を調査をした結果、実施率は、「社員数300人以上の会社では9割超」「社員数300名以下の会社では87%」となっています。会社の規模が小さくなると実施率は低くなる傾向にありますが、ほとんどの企業で新入社員研修は行われているということです。これからわかるように、大半の企業にとって、新人研修は必須のものといえます。
業種・業界を超えた共通のビジネススキル
新人研修のプログラムは次の3つの柱から構成されています。
『学生から社会人への切り替え』
『専門知識』
『仕事の知識、会社の知識』
次に、1つ目の柱である「学生から社会人への切り替え」について解説します。多くの企業が「新人研修の目的」と考えているのは次の項目です。
社会人としての基礎基本
態度能力(礼儀)
実務能力
これら3つは、そのまま1つ目の柱「社会人に必要なスキル」にあてはまります。つまり、大半の企業が専門知識の前に、まずは「社会人としての常識やスキルを身に付けてほしい」と考えているということです。具体的にどのような考え方をしたら、新人に「社会人に必要なスキル」が定着しやすくなるかを考えていきます。
「学生から社会人への切り替え」
「社会人としての自覚と認識」をもっと分かりやすく言えば、「学生とは違うことを理解させる」「意識の改革」となるでしょう。「規律を守り、会社に迷惑をかけるようなことはしない。社会人として、お金をもらっていることを認識し、責任と責任感をもつ」という考え方に加えて、ケーススタディーをもとに落とし込みをすることが必要です。
社会人になると必要な意識として、「主体性」があります。学生時代は、学校が学習の材料を与えてくれましたが、社会人は自発的に取り組むしかありません。近年、「主体性をもって行動する」社員が多くの企業で求められているのは、言うまでもありません。
新入社員研修の内容の選定
経営者の声
研修の土台として外すことができないのが、経営者の考えです。会社をどのようにしたいのか、そのためにどのような社員になってほしいのか。この根幹となる柱をなくして、よい研修を構築することはできません。即戦力になってほしいと思うのはどの経営者も同じだと思いますが、肝心な社員像なくして、育成をしても会社の理想とする社員とはかけ離れた人財を育成することになります。ただ、業績を上げる社員でよいのか、協調性が高く仕事をして業績を上げる社員とでは、大きく違ってきます。
そのため、はじめに経営者に人財育成方針を確認するところからがスタートです。経営者との時間を取り、十分にヒアリングを行い具体的なスキルや知識に反映していきます。特にどのような人財になってほしいという点を詳しく聞いて下さい。
また、必要に応じて、管理職にも確認をとり、新入社員に身に付けさせたいスキル・知識の程度を把握します。現場に近い、管理職やリーダーのほうが、経営者より実際の現場で必要なスキルを分かっていることが多いと思います。その声を反映すると現場と研修とのギャップは少なくなります。
更に、先輩社員に新入社員研修で役立ったことや新入社員研修で教えてほしかったことや学んでいなかったことで、現場で叱られたことなどを聞きます。現場に配属される前に知っておいてほしいこと、身に付けてほしいことや新入社員を育てる中で感じたことを聞いて下さい。
事前に内定者からヒアリングをおこない、新入社員研修時に教えてほしいこと、学びたいスキル、事前に知っておきたい会社のことなど、受講する立場で入れてほしい内容を反映することで、新入社員のニーズを満たした研修を行うことができます。
内容を決める
研修においては、社内で行う研修と外部へ委託する研修があると思います。大手企業であれば、全て内製化している企業も多いですが、多くの企業が内製と外部委託の両方で実施をしています。
新人研修に特化した研修会社は全国に沢山あります。ビジネスマナーから体験学習まで幅広く対応できる企業もあります。
研修の外部委託と内製化には、それぞれ良い点と悪い点があります。内容によって、外部委託するものと内製化するものの棲み分けをすると良いです。
自社でできないもの
・専門性が高いもの
・ビジネスマナー
・体験型研修
例えば、自社の状況や業界の課題などについての研修は、その内容に精通した内部講師が行うほうが良いです。近年、ビジネスマナーや宿泊を伴ったチームビルディングなのどの体験型の研修を導入する企業も増えているようです。社内でビジネスマナーの研修をおこなったが、準備が大変だったわりには、新入社員に思うように伝わらなかったという話はよく聞きます。
業種や職種に縛られない研修で、かつ社内では専門的に教えられないものは、外部研修のほうが成果を得られたという話をよく聞きます。
スケジュールを決める
スケジュールで重要なことは、進める順番を間違えないようにすることです。順番を間違えてしまうと効果が得られないこともあります。特に間違えていけないものは、入社前と入社後のスケジュールと、入社後の研修の順番です。
入社前は、学生から社会人への切り替え、意識改革などの研修はおすすめしません。なぜならば、内定者はまだ、社員でもなく、社会人でもないからです。「まだ、学生なのだから今、そこまで要求されたくない」と考える内定者もいるからです。入社する際に、必ず必要になる内容ですが、タイミングを間違えると入社前に不信感を与えかねません。入社後の研修についての順番ですが、一番初めにおこなった方がよい内容はビジネスマナーです。入社後のできる限り早いタイミング、できれば当日、翌日がおすすめです。後になってしまうと、学生から社会人への切り替えができずに、学生気分を引きずったまま研修を受講することで、研修の効率も大変悪くなります。
切り替えができていないと、研修中に眠ってしまったり、時間に遅れたり、受講姿勢がなっていなかったりと、研修を進める方が大変になります。
そのようなことから、研修のスケジュールはよく考えて組み立てる必要があります。マナー研修の後に、自社や業界についての知識、その後、実践的な内容に入ったほうが、仕事のイメージを持ちやすく、知識やスキルが身に付きやすくなります。また、就業規則や社内施設など、会社で働くうえで不可欠な内容の説明も、早いうちに行うのが適切です。なお、1時間に1度の休憩時間とり、換気を行い、受講者の集中力を保つため、休憩時間を確保すると良いです。
研修の終わりには、振り返りの時間を設けることをおすすめします。新入社員の知識・スキルの定着や、今後のフォローアップのため、必ず振り返りの時間を設けましょう。研修報告書の作成やアンケートも併せて行い、次年度以降の新入社員研修の改善に活用します。1日の終わりや研修期間中の毎週末など、定期的に行うことが重要です。また振り返りは、研修時間内や受講者の頭に残っている時におこなって下さい。
1日目は内部講師が研修をする日、2日目は外部セミナーに参加させる日など、内製化する部分と外部研修を交互に行うのもおすすめです。内部研修がつづくと慣れが生じてくること、反対に、外部研修も同じで、連続しておこなうことで、慣れてくるとメリハリがなくなるケースもあります。1週間おきにスケジューリングすることで、緊張感を持たせることができます。
ゴールを設定する
また、研修を行うにおいて、ゴールを設定することも大事です。研修ではありますが、新入社員にとっては、給与が発生する仕事でもあるからです。業務である限り、成果が求められます。
期間中、合格基準を設けて具体的に設定すると良いでしょう。目標に対しては、期限を設定することも重要です。「いつごろまでに、何を、どの程度までできるようになるか」という形で目標設定を行いましょう。例えば、配属後に、1人でお客様へ電話がかけられるなど。
タイミングを決めて学んだことについてテストを行うのも効果的です。レポートだけでは、所感が中心となるので、受講者の頭にのこっているのか、理解ができているのか、正直わかりません。自ら研修の復習をおこなう新入社員も多くはありませんので研修期間中、予めテストを行うことやテストの日程を伝えることで、受講者の意識が変わります。
レクリエーション
研修前や途中にレクリエーションゲームを取り入れていらっしゃいますでしょうか。研修にレクリエーションは必要ないと思われるかもしれませんが、緊張する場面や頭をたくさん使う場面では、気分転換も必要です。毎日研修が続くと自ずとモチベーションも下がってきます。
長い新入社員研修の期間のプログラムの一環として、スポーツやゲームを取り入れている企業もあります。業務とは直接関係ありませんが、まだ会社に慣れていない新入社員の緊張を和らげ、自然なコミュニケーションを促すのに効果的です。そのため、研修の合間やグループワークの直前にレクリエーションを取り入れることをおすすめします。
レクリエーションを入れることで、コミュニケーションの質が一気に向上したという事例が実は沢山あります。チーム対抗戦でのグループワークなど研修そのものにゲーム性を持たせることで、楽しみつつ主体的な参加を促すことができ、研修の効果をより高めることが期待できるはずです。チームビルディングにも役立ちます。
<レクリエーションゲームを入れる効果>
・緊張が緩和
研修中は、静かな環境の中で、緊張感や張り詰めた空気感が漂います。新入社員研修ともなると、まだ見知らぬ相手も多い中なので、その緊張感はより増します。緊張したまま研修に参加すると記憶にも残りにくくなってしまいます。そんな状況の中で、誰もが分かるシンプルなルールと手軽に楽しめるレクリエ―ションを取り入れると、その緊張感が緩和されます。
例えば、施設が使えるようでしたら、サッカー、バレーボール、バスケットボール等のスポーツやちょっとしたゲームも良いでしょう。
最後まで集中して研修に参加することはなかなか難しいため、適度に休憩をとることで、集中して疲れた頭を休めることができます。その際にレクリエーションゲームを少し取り入れるだけで、ブレイクタイムになり、その後の研修にまた集中して取り組める切り替え場面にもなります。受講者にとってもメリハリができます。
事前に研修のタイムスケジュールの中にブレイクタイムを設けて、ゲームに取り組むことで研修効率を上げていきます。
・コミュニケーションを活性化
研修の時に参加者同士でコミュニケーションを取る時間は限られています。そのため、思った以上に雑談などのコミュニケーションが取れないケースが多々あります。ゲームをすることで、自然と会話が増えコミュニケーションが活発になります。コミュニケーションが活性化することは研修時だけではなく、その後の業務でも有効ですので、ゲームの内容はなるべく参加者同士が関わり合えるものを選ぶと良いでしょう。
・主体性・チームワークの向上
研修は主に講師が一方通行で話す講義スタイルが多いです。聴くことで知識は身に付きますが、積極性などの行動変容には直結しません。座学だけの講義の場合は特にレクリエーションを取り入れることで参加者の積極性や自発性が促されます。講義で知識を学び、レクリエーションで行動力を身につけることで、人間関係や今後の業務態度に変化がもたらされます。全員が楽しんで参加できるよういくつか簡単に楽しめるゲームを考えましょう。